家を買うときには不動産会社や営業マンが手厚くサポートしてくれますが、売るときはさまざまな手続きを自分自身で進める必要があります。
手順を間違えたり、知識が不足していたりすると、売却がスムーズに進まないばかりか、損をしてしまう場合もあるのです。
初めて家を売る人でも分かりやすく、損をしない手順を解説します。今後家を売ろうと考えている人はもちろん、今すぐに売りたい人も、手順とポイントをしっかり理解して売却を進めましょう。
もくじ
家を売る手順:相場の確認
家を売る検討を始めたら、まずは自分で相場の確認をしましょう。おおよその相場を把握していないと、不動産会社との交渉はもちろん、売却価格で損をしてしまう可能性もあります。
また、売却後に新しく家を買ったりローン残債があったりする場合、どれくらいの金額で売却できるかどうかは、今後のマネープランを立てる上でも大切です。
レインズ・マーケット・インフォメーションで確認
レインズ・マーケット・インフォメーションは国土交通省指定の不動産流通機構が運営するサイトで、地域ごとに過去1年間分の不動産売却価格を確認できます。
地域ごとに相場が分かるほか、売却価格に影響しやすい家の築年数や間取りといった、不動産の条件ごとに絞り込んで検索できるため、誰でも気軽におおよその相場が分かることが特徴です。
レインズ・マーケット・インフォメーションでは売り出されている価格ではなく、実際に売却された金額が分かるため、売却価格を予測しやすい点も優れています。
過去1年間分しか閲覧できませんが、最新の情報がまとめて確認できるので、素人でも相場観がつかみやすいです。
しかし、人口が少ない地域や、売買が盛んでない地域は取引事例が少ない場合もあるため、田舎や山奥の家では相場を予想しにくい点はデメリットです。
参考:国土交通省指定不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」
土地総合情報システムで確認
土地総合情報システムは国土交通省が運営する不動産取引価格の情報検索サイトで、土地や建物の成約価格を過去5年間までさかのぼって検索できます。
土地総合情報システムでは、土地の相場が5年間で下落傾向か上昇傾向かを簡単に確認できる点がポイントです。
一般的に建物の価格は築年数に応じて徐々に下がっていきます。しかし、家の売買では土地がセットになるため、必ずしも売却額が年月に比例して下がり続けるとは限りません。
土地の相場の傾向がつかめると、家の売り時を考える目安になり、損を最小限に抑えて家を売る計画を立てられます。
参考:国土交通省「土地総合情報システム」
家を売る手順:不動産会社に査定を依頼
自分で調べる不動産の相場価格はおおよその売却価格です。特に家を売る場合、メンテナンス状態や周辺の状況といった個別の要素で売却価格は変動します。
不動産会社による査定であれば、個人では判断しにくいさまざまな要素を調査し査定額を算出できます。
不動産会社による査定には机上査定と訪問査定の2種類がありますが、それぞれでメリットとデメリットがあるので、違いを理解して査定を依頼しましょう。
机上査定を依頼
机上査定は文字通り、売りたい家の情報を基に机上で査定額を算出する方法です。
メールや電話だけで完結する査定方法で手間が少なく、査定の結果もすぐ出る点がメリットです。
不動産会社が売りたい家のデータをしっかり調べるほか、不明点はもちろん、査定に影響を及ぼす可能性がある要素のすり合わせもできます。
自分で調べる方法に比べれば精度は高く手間も少ないので、今すぐに売却するつもりはない人でも依頼しやすい査定です。しかし、実際に家の状態を見ないで査定するため、訪問査定に比べると精度は落ちます。
訪問査定を依頼
実際に売りたい家の状態を不動産会社が確認するため、精度の高い査定額算出が期待できます。
訪問査定では、建物のメンテナンス状況はもちろん、日当たりや周辺施設、道路状況といった査定額に影響するさまざまな要素を考慮して査定額を算出します。
信頼度の高い査定方法で、家を売る時期が決まっている人や、すぐにでも売りに出したいと考えている人に向いている査定方法です。
デメリットは、不動産会社の訪問に際して調整が必要で、査定額の算出にも時間がかかる点で、気軽に依頼できる査定ではありません。
参考:不動産流通推進センター
家を売る手順:不動産会社と契約締結
不動産会社による査定が済んだらいよいよ契約です。不動産会社との契約は媒介契約と買取契約の2つが選べるほか、媒介契約には種類があります。
家を売りたい理由や、目標の売却額、売れるまで待てる期間によって最適な契約が異なるため、自分に合った契約を選びましょう。
媒介契約
媒介契約は家を売る際に、不動産会社が間に入って売却活動を手伝ってもらう契約です。
買取契約よりも高く売れる可能性が高い点がメリットですが、売れるまで時間がかかる可能性がある点がデメリットです。媒介契約には3種類の契約が選べます。
一般媒介契約
一般媒介契約のメリットは複数の不動産会社と契約ができる点です。需要の高い人気物件に向いている契約で、不動産会社同士が競い合うため、より高く売れる可能性があります。
また、不動産会社選びで失敗するリスクがないほか、売主自身で買主を見つけてもよい契約です。
また、レインズへの登録義務がないので、家を売りに出している情報を公にしたくない人にも向いています。
しかし、レインズへの物件登録がないと広く物件を告知できず、人気のない物件はなかなか売れない可能性もあります。
また、不動産会社は販促活動に関して売主に報告の義務はないため、売れる見込みが低い物件や利益の少ない物件は、積極的に販促活動をしてくれない場合がある点もデメリットです。
築年数が経っている物件や、人気のないエリアの家には向いていない契約です。
専任媒介契約
専任媒介契約のメリットは、媒介契約の中でも早く売却先が見つかりやすい点です。
不動産会社1社との契約になりますが、レインズへの登録義務があるため、全国で物件が共有されるほか、売主自身で買主を見つけてもよい契約です。
また、契約を結んだ不動産会社は2週間に1回、売主への状況報告が義務付けられているため、コミュニケーションを取りながら成約を目指せます。
デメリットは1社としか契約できないため、不動産会社の営業力に左右されやすい点です。
また、レインズ経由で他の不動産会社から物件紹介の依頼があると、買主からの仲介手数料が得られず、自社で囲い込みをされる場合もあるため、早く売買を成立させるには不動産会社選びも大切です。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、不動産会社が最も積極的に営業活動を実施してくれる契約です。
専任媒介契約同様に1社としか契約できない上、売主自身で買主を見つけられないため、不動産会社は優先して営業活動をしてくれます。
また、1週間に1回の売主への報告が義務付けられており、専任媒介契約よりもこまめに状況を把握できるので、不動産会社に売買をすべてお任せしたい人に向いています。
専任媒介契約同様に囲い込みされる可能性があるほか、媒介契約の中でも営業力に左右される契約のため、不動産会社選びが最も重要になる契約方法です。
買取契約
買取契約は不動産会社が家を直接買い取ってくれる契約で、売却まで時間がかからない点がメリットです。
媒介契約と比べ、不動産会社とのやり取りが少なく、内覧をはじめとした買主とのやり取りもないので手間もかかりません。
また、買主が住み始めてから建物の欠陥が見つかった場合も、責任を負う必要がない点もメリットです。
時間がなくて、家をすぐに現金化したい人や、周囲に知られずに売却したい人に向いています。しかし、媒介契約に比べると、買取価格は6割前後になる場合が多く、金銭的には損をする点はデメリットです。
参照:不動産流通推進センター「媒介依頼を受けた不動産を、宅建業者が買い取り、転売することの是非」
家を売る手順:家を売る活動を開始
不動産業者と媒介契約を結んだら売却活動を開始しますが、売り出し中に最も大切なのは内覧の印象です。
例えば、外装や内装に目立つ傷や欠陥があると、家全体のメンテナンス状況が悪い印象を与えてしまいます。
きれいに整頓された状態で生活感が伝わりにくい状態がベストで、不要な物を増やさず、いつ内覧の予約があっても対応できるように定期的に掃除しておきましょう。
水回りの汚れや管理状態は特に印象を左右しやすく、買主にとっては値引き交渉の材料にもなります。
必要に応じてハウスクリーニングを利用したり修理を依頼したりして、きれいな状態をキープするようにしましょう。
家を売る手順:家を売る契約を締結
買主が見つかったら売買契約を結びます。売買契約時に必要となるのは不動産会社への仲介手数料の支払いと、瑕疵担保責任保険加入の検討です。
仲介手数料の支払い
売買契約と同時に仲介手数料の半額を不動産会社に支払うのが一般的です。
仲介手数料は売れた金額に応じて上限が定められており、ほとんどの不動産業者で上限金額が請求されます。
上限額は売買価格の200万円以下の部分で5%、200万円から400万円以下の分で4%、400万円を超える部分で3%の手数料が上限です。
家の売買では400万円を超える取引が多いですが、400万円以上の場合は売買価格の3%に6万円を足し合わせ、消費税10%を掛けると算出できます。
また、400万円を下回る価値の低い物件の場合、不動産会社の負担が大きいため、仲介手数料と合わせて税抜き18万円までなら費用として請求が認められているので注意が必要です。
不動産会社によっては仲介料金を割り引くサービスを実施している場合や、値引きに応じてくれる場合もありますが、不動産会社の利益が減るため、無理な交渉をすると販促活動の優先順位を下げられてしまう恐れもあります。
参照:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号)
瑕疵担保責任保険加入の検討
瑕疵担保責任保険に加入しておけば、引き渡し後に住宅の問題が見つかった場合も安心です。
例えば、雨漏りやシロアリ被害といった住宅の瑕疵を伝えずに契約し、引き渡し後に発覚した場合、売主が責任を負う必要があるのです。
売主が住宅の瑕疵を認識していなかったとしても、売主の責任で修繕や、修繕に伴う仮住まいの費用まで負担しなければなりません。
瑕疵担保責任保険は売主だけでなく、買主も安心できる保険です。売買契約時にいつまで売主が住宅の瑕疵責任を負うかを明確にしておくのはもちろん、瑕疵担保責任保険の加入も検討しましょう。
参照:国土交通省指定の事業者
参照:一般社団法人住宅瑕疵担保保険協会「住宅瑕疵担保保険とは」
家を売る手順:引き渡し
引き渡し日までに必要な作業は引っ越しだけではありません。
物件の準備はもちろん、抵当権の抹消や所有権の移転に伴う手続きは、不動産会社が全てを準備してくれるわけではないのです。
引き渡しまでの準備には、物件と手続きそれぞれにポイントがあります。
物件の準備
物件は引き渡しまでに、契約の条件通りの状態にする必要があります。
引っ越しを完了させて、不要な荷物が全て撤去されているかはもちろん、庭木も除去された状態を希望する買主が多いです。
また、土地の境界線を証明する書類がない場合、隣地の所有者と立ち合いの元、トラブルが起きないように双方で確認が必要です。
場合によっては土地家屋調査士に依頼して測量を実施して境界線を明確にし、建物を解体する契約なら、解体も済ませて更地にしておきましょう。
手続き準備
税金の計算や抵当権の抹消、所有権の移転手続きとさまざまな手続きがあり、司法書士に依頼する方法が一般的です。
売主のローン残高以外にも、司法書士への報酬、固定資産税の清算、不動産会社への仲介手数料の残金支払いがあります。
司法書士と話し合いながら、最終的に手元に残るお金、もしくは足りない分を事前に明確にしておくとスムーズです。
司法書士に依頼せずに、独力で手続きを進める方法もありますが、書類の準備に手間がかかるほか、不備があると売却手続きが進まない可能性もあります。
家を売る際の必要書類
家を売る際は、さまざまな書類が必要です。普段は見慣れないような書類も多くあるため、事前に把握しておくと良いでしょう。
必要書類は状況によって変わるため、用意する際は不動産会社に確認してください。
ここでは、家を売る際に基本的に必要な書類を紹介します。
身分証明書
家を売る際は、本人確認が必要であるため必ず身分証明書が必要です。
身分証明書には、下記のような書類が使用できます。
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
身分証明書は、売買契約時と決済時に必要です。決済時に身分証明書を忘れてしまうと、所有権移転登記ができなくなるため注意してください。
実印・印鑑証明書
売買契約書などの買主との間で交わす書類には、すべて実印で押印します。また、同時に印鑑証明書も必要になります。
実印とは、市区町村に登録した印鑑のことです。居住する市区町村役所に届出を提出すれば取得できます。
印鑑証明書とは、実印が本物であることを証明する書類です。印鑑証明書も居住する市区町村役所で取得可能です。
※印鑑証明書は決済日より3ヶ月以内のものでなければならないため、注意してください。
登記済証または登記識別情報
登記済証(権利証)または登記識別情報については、不動産の所有権に関する登記が完了したことを証明する書類です。これらは所有者本人であることを証明するため、不動産の登記時に必要になります。
登記済証と登記識別情報の違いは、不動産を取得した時期によって異なります。平成17年3月まで、登記済証が発行されていました。
しかし、平成16年に不動産登記法が改正されたことにより、登記済証の発行は廃止され、登記識別情報が発行されるようになりました。
万が一、登記済証または登記識別情報を紛失してしまった場合は、再発行はできないため、下記の方法で対応します。
- 事前通知制度
- 司法書士や公証人による本人確認
事前通知制度とは、法務局へ申請することで送られてくる「事前通知」に署名・捺印し、2週間以内に返送することで、登記済証などがなくても所有権移転登記が可能です。
司法書士や公証人による本人確認とは、司法書士や公証人に本人確認情報を提出してもらうことで、所有権移転登記が行えるようになります。
ただし、報酬として数万〜数十万円の費用が必要になるため、注意してください。
登記簿謄本または登記事項証明書
登記簿謄本または登記事項証明書とは、下記のような不動産情報が記載された書類になります。
- 土地や建物の所在・面積
- 所有者の情報(氏名や住所など)
- 登記された日付や原因
- 抵当権の詳細や利息について
上記の情報を確認するために登記簿謄本または、登記事項証明書が必要になります。
なお、登記簿謄本と登記事項証明書に記載されている内容は同じです。平成20年までは登記簿謄本と呼ばれ、紙の書類として管理されていました。
しかし、平成20年以降はコンピュータでデジタル管理されるようになり、そのデータを印刷したものを登記事項証明書と呼びます。
登記簿謄本や登記事項証明書は、法務局の窓口やHPから取得可能です。
収入印紙
収入印紙とは、印紙税が課される書類に貼付する証票です。家を売る際の売買契約書にも収入印紙を貼付する必要があります。
収入印紙は郵便局や法務局・コンビニなどで購入できます。
固定資産税納税通知書
固定資産税納税通知書は、固定資産税額の確認と不動産の登記を行う際に必要です。
登記の際は登録免許税を支払う必要があり、その金額は固定資産税評価額を基に算出されます。
固定資産税納税通知書は、毎年4月1日以降に市区町村役所から自宅へ郵送されます。家を売る際は、最新のものを用意しましょう。
紛失した場合は、再発行はできませんが、固定資産評価証明書で代用可能です。
固定資産評価証明書は、家の所在地である市区町村役所で300円の手数料を支払うと取得できます。
土地測量図・境界確認書
土地測量図や境界確認書には、土地の面積や隣接する土地や道路との境界が詳しく記載されています。
境界が確定していないと隣地の人と後々トラブルになる可能性があるため、必ず必要な書類です。
もし、境界が確定していない場合は、土地家屋調査士に測量を依頼する必要があります。
建築確認済証および検査済証
建築確認済証および検査済証とは、下記の内容を証明するための書類です。
- 建築基準法に定められた基準で建築されているか
- 建築確認申請通りに工事が行われたかどうか
万が一、紛失した場合は、建築計画概要書、台帳記載事項証明書で代用可能です。
これらの書類は、市区町村役所で取得できます。
マンションを売る際に必要な書類
マンションを売る際は、さきほど紹介した書類に加えて下記のような書類も必要です。
- マンションの管理規約・使用細則
- 維持費関連書類
マンションの管理規約・使用細則には、ペットの可否や共有部分や専有部分の使用方法などのルールが記載されています。
また、マンションには管理費や修繕積立金が必要です。そのため、これらの費用が記載されている維持費関連書類も必要になります。
家を売る際にかかる費用
家を売る際には、さまざまな費用や税金がかかります。直前になって慌てることのないように、どのような費用がどれくらいかかるのか事前に把握しておきましょう。
ここでは、家を売る際にかかる費用や税金について解説します。
不動産会社への仲介手数料
家を売る際に、不動産会社へ仲介を依頼した場合は、仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料は家を売った金額の一部を支払う決まりになっており、宅建業法によって報酬の上限は決まっています。
仲介手数料の割合は、家を売った金額によって変動しますが、3%〜5%程度です。
参照元:宅建業者が売買等で受けることができる報酬の額−国税庁
抵当権抹消登記費用
抵当権が設定されている家を売る際は、決済日に抵当権を解除する必要があります。このとき、司法書士へ支払う「抵当権抹消登記費用」が必要です。
抵当権抹消登記費用は、不動産一個につき1,000円かかります。また、司法書士への報酬は、依頼先によって異なりますが、5万円程度が相場です。
なお、抵当権抹消登記は、自分で行うこともできますが、手続きが面倒であるため、一般的には司法書士への依頼となります。
測量費用
戸建ての家や土地を売る際には、隣地の人とのトラブルを避けるためにも、土地の境界を確定しておく必要があります。
境界が確定していない場合は、土地家屋調査士に依頼して境界を確定しておきましょう。
測量費用は、土地の面積や形状などによって変動しますが、30万円〜と高額な費用がかかります。
印紙税
印紙税とは、金銭のやり取りに関わる契約書や領収書を交わす場合に納付する税金です。
家を売る際の売買契約書にも印紙税が発生します。
印紙税額は、家を売った価格に応じて下記のように変動します。
売却価格 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円超、50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超、100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超、500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超、1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超、5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超、1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超、10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円〜 | 60万円 | 48万円 |
※なお、平成26年4月1日から令和6年3月31日までに作成された書類の場合、軽減税率が適用されます。
参照元:不動産売買契約書の印紙税-国税庁
譲渡所得税
譲渡所得税とは、家を売って得た所得(譲渡所得)に対して課税される税金です。
所得税率は、家を所有していた期間に応じて、下記のように変動します。
- 所有期間5年以内:30%
- 所有期間5年以上:15%
また、平成25年から令和19年までは、譲渡所得税額の2.1%が特別復興所得税として別途、徴収されます。
譲渡所得の算出方法は、下記の通りです。
・家を売った価格−譲渡費用−取得費=譲渡所得
参照元:譲渡所得について−国税庁
譲渡所得税を納付するためには、確定申告が必要です。そのため、家を売った翌年は、確定申告を忘れないよう注意しましょう。
※確定申告は、毎年2月16日〜3月15日の1ヶ月間に行う必要があります。
住民税
譲渡所得には、所得税だけでなく住民税も課税されます。譲渡所得に課税される住民税の税率は、下記の通りです。
- 所有期間5年以内:9%
- 所有期間5年以上:5%
所得税と同様に譲渡所得を確定申告することで、納税額が算出されます。
参照元:家を売った時の住民税率−国税庁
家を売る際にかかる費用について、さらに詳しく知りたい人は家を売るまでにかかる費用を紹介|手数料から税金までわかりやすく解説をご覧ください。
家を高く売るポイント
家を高く売るためには手順通りに進める以外にも、いくつかのポイントがあります。不動産会社選びはもちろん、売り時や税金も念頭におきながら、売却活動を進めましょう。
売れやすい時期
不動産は売れやすい時期があり、3月上旬の引き渡し日程が最も需要が高まるタイミングです。
日本では4月から新しい年度が始まる学校や会社がほとんどなので、12月から3月までが売却活動に最適です。
買主も引っ越しをはじめとした手続きがあるため、3月上旬引き渡しができるように、逆算して家を売る準備を始めると、売却価格も自然と高くなります。
売り先行と買い先行
新居への住み替えの場合、家を売るのが先か新居を買うのが先かで、メリットとデメリットがあります。
売り先行の場合、一度ローンをクリアにしてから新居を探せるため、マネープランが立てやすく、売却活動にも時間をかけられるので高く売れる可能性がある点がメリットです。
しかし、新居が見つかるまでは仮住まいが必要になります。売り先行はリスクが少なく、金銭的に損をしたくない人向けです。
買い先行の場合は新居探しに時間をかけられる点です。また、仮住まいが不要なほか、空家の状態で売却活動ができるため、時間的にも余裕をもって手続きを進められます。
デメリットは家を2つ持つ期間が発生すると、ローンが2重になる可能性がある点です。買い先行は金銭的に余力がある人に向いています。
決められた期間内に売れなかった場合、不動産会社が買い取ってくれる買取保証サービスを実施している不動産会社もあるため、買い先行を選びたいなら検討しましょう。
家を売ることを得意とした不動産会社の選定
不動産会社によって得意分野が異なるため、家を売った実績が豊富な不動産会社を選びましょう。
過去の取引実績が豊富な不動産会社であれば、信頼度は高くなります。また、そのエリアに精通しているか、類似物件の売却実績が豊富かどうかなどが重要です。
そのため、家を売る際は、とにかく大手企業に依頼しておけば良いわけではありません。
また、不動産会社だけでなく、担当者の力量によっても結果は変わるため、依頼する際は慎重に選ぶ必要があります。
相場よりも高めの売り出し価格を設定
家を売る際に買主から値下げ交渉される場面は、多々あります。そのため、家を高く売るためには、あらかじめ値下げを前提とした価格設定にしておく方法も有効です。
少し高めに設定しておくことで、買主は値下げ交渉を成功させられるため、お得感を得られ早期売却に繋がります。
家を売る際の注意点
家を売る際には、注意すべきポイントがたくさんあります。ここでは、家を売る際の注意点について解説します。
複数の不動産会社に査定依頼
複数の不動産会社に査定を依頼して、信頼できる不動産会社を探しましょう。
例えばオンラインサービスの一括査定を利用すると、一度に複数社の机上査定結果を確認できるのでおすすめです。また、訪問査定までは無料で受けられるため、売りたい時期まで時間があるなら、気になる不動産会社2~3社に依頼するようにします。
高く見積もってくれる会社が分かるだけでなく、不動産会社や担当者が信頼できるかどうかも、気持ちよく手続きを進める上で大切なポイントです。
確定申告
家を売って譲渡所得や譲渡損失が発生した場合、確定申告が必要です。譲渡所得や譲渡損失は、家を売った金額から、購入した金額と売却に要した費用を引いた金額で算出されます。
譲渡所得が発生した場合は税金を収める必要がありますが、3000万円までの利益は控除される制度があります。控除の適用は居住用の家のみで、空家は3年目の年末までに売却しなければならないため注意が必要です。
また、5年以上住んでいる家で譲渡損失が発生した場合、給与所得や事業所得から控除する制度もあります。譲渡損失の控除に関する制度は令和5年末までの特例です。制度の利用には確定申告が必要なので、忘れずに手続きをしましょう。
参照:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
参照:国税庁「措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》関係」
住宅ローンがある場合
住宅ローンの残債がある家は、残債を一括返済しなければ、売れないため注意してください。
なぜなら、住宅ローンの残っている家には、抵当権が設定されているからです。
抵当権とは、住宅ローンを組む際に金融機関が家や土地に設定する権利のことです。つまり、住宅ローンが返済できなくなった場合に備えて、担保にとっている状況になります。
抵当権は、住宅ローンを返済するまでは解除できないため、家を売る際は残債を一括返済しなければなりません。
しかし、家を売った金額で残債を支払えるのであれば、問題なく売れます。また、住宅ローンの返済が困難であり、家を売りたい場合は、金融機関の合意を得て売る「任意売却」という方法もあります。
基本的にリフォームは不要
家を売る際に、リフォームしてから売ろうと考える人もいますが、基本的にリフォームは必要ありません。
なぜなら、工夫次第で家の印象をよくする方法はありますし、リフォームしなくても家は売れるからです。
たしかに、リフォームすることで家の価値は上がり、査定額や売却価格を上げられますが、多額の費用がかかります。
リフォームしたところで、多額の費用を上回る利益を出せるかどうかはわかりません。
また、買主の中には自分でリフォームしたい人も多く、リフォーム前提で家を探している人もいます。
参照元:土地・住宅に関する消費者アンケート調査−全国宅地建物取引業協会連合会
そのため、リフォームするかどうかは、不動産会社とよく相談してから決めましょう。
内覧時の清掃
購入希望者が内覧に来る際は、必ず掃除しておきましょう。
家を売る際に内覧時の印象は非常に大切です。購入希望者の購入意欲を削がれないように、綺麗にしておきましょう。
費用はかかってしまいますが、ハウスクリーニングをプロに依頼するのも良いでしょう。
査定額=売却価格ではない
初めて家を売る場合、勘違いしてしまう人もいますが、査定額=売却価格ではないため注意してください。
査定額とは、あくまで不動産会社が独自に算出した金額であるため、必ずしも査定額で売却できるわけではありません。
不動産会社の中には、契約欲しさに高めの査定額を提示してくるところもあります。
査定額が高額だからと言って、安易に契約してしまうといつまでたっても売れない可能性もあるため、注意してください。
古い家を売る場合
古い家(築年数が耐用年数を超えるような家)は、価値が低くなってしまうため、売るためのハードルが高くなってしまいます。
そのため、下記のように売り方を工夫する必要があります。
- 古家付きの土地として売る
- 解体して更地にして土地を売る
- リフォームして売る
どのようにして売り出すかは、不動産会社と相談しながら決めましょう。
家を売る手順まとめ
家の売買はお金のやり取りも高額になるので、失敗したらどうしようと心配になる人も多いでしょう。特に家を売る場合、自分で進めなければならない準備や手続きも多く、初めての人は不安が付き物です。
今回解説した基本的な手順とポイントをしっかり理解して、納得いく取引を目指しましょう。